WordPressという『技術的負債』から脱出できる日は来るのか

WordPressを好きで使っている技術者は誰もいない

ノーコードでブログを開設出来るためアフィリエイトブログの代名詞となったWordPress。20年前の掲示板サイトと同じ『PHP』というミドルウェアが基盤として使われており、表示がとにかく遅い化石のようなサイトになるのが特徴です。

WordPressが遅いのは、PHPが「呼ばれるたびにWebページをまるごと生成して表示する」旧世代の技術なのが理由です。Googleなど現代的なサイト、特にWebアプリと呼ばれるようなサービスではサイト表示にJavaScriptというスクリプト言語がふんだんに使われており、一度ページを読み込んだあとはユーザーの操作などに応じて動的に必要な部分だけを読み込んで更新します。

更新時に読み込むデータが少ないほど訪問者にもサーバーにも負担が少ないので、技術者なら誰でもJavaScriptベースのサイトを作りたいと思っています。しかし、実際にはそう簡単にはいきません。

『SEO』というバッドノウハウのせいでWordPressは延命した

Googleなどの検索エンジンは、世界中のWebサイトを定期的に巡回してデータベースを更新し、検索結果に表示します。この巡回ソフトを『クローラー』と呼びますが、かつてはクローラーの性能が低く、ChromeなどのWebブラウザの表示ほど正確にサイトデータを収集できませんでした。具体的には、JavaScriptを多用したサイトの巡回が苦手だったのです。

そのため、表示が高速なJavaScriptベースのサイトより、ページをHTMLとしてベタッと表示するPHPのサイトの方がGoogleに収集されやすく、検索結果の上位に表示されやすいという不条理な状況が生まれました。「WordPressはSEOに強い」と言われてきた理由です。

つまり、WordPressを用いたサイトは「人間にとっての使い勝手よりGoogleのクローラーの使い勝手を優先する」という本末転倒なことをしているということになります。

Googleもそうした状況を良いとは思っていなかったので、Chromeと同等の機能をクローラーに持たせるようになりました。このアプリはHeadless Chromeとして一般にも公開されています。

生成AIで無意味化するSEO

昨年にChatGPTを筆頭に生成AIショックが起こり、一般人がWebサイトを検索してアフィリエイトブログやまとめサイトに悩まされることなく問題を解決出来るようになりました。もちろん生成AIもGoogleと同様に世界中のWebサイトを巡回して学習しているのですが、生成AIは不快な広告を見せたり下らない宣伝文を訪問者に読ませることなく、短文でズバリと解決策を提示してくれます。

ネットユーザーは買い物をしたい時だけは検索を続けると思いますが、そうでない時は生成AIに聞いて済ませた方が「タイパが良い」のですから、この先のアフィリエイトブログの運命は推して知るべしです。

検索エンジンが無意味化したことでSEOも無意味化し、結果的にWordPressという化石アプリもWebマーケティングの観点からは無意味化しました。SEO業者は「生成AIO」といった売り文句で生き残りを図ると思いますが、生成AIはよっぽどのことが無ければ外部サイトを見ないで済むような回答をするはずですから、効果は限定的と言えます。

卒業したいのに卒業できないWordPress

もはや「WordPressを卒業しない理由」はなくなりました。そこでJavaScriptをふんだんに活用したブログエンジンを探すことになりますが、なぜかWordPressを代替する決定的なソフトは未だに存在しません。

WordPressにはサードパーティーによる豊富なプラグインがあり、ビジネスのエコシステムとして回っているので簡単には他製品がひっくり返すことが出来ない状況にあります。

私が最近注目しているのはStrapi – Open source Node.js Headless CMSで、ノーコードでブログを開設できます。日本語に未対応なのでまだ自分で導入するのは時期尚早と判断していますが、高速なサイト表示を実現するための技術的な要件は満たしているようです。

実際にStrapiでブログを運用するにはAWSやGitHub Pagesなどのクラウド基盤で簡単に動かせる必要があります。既に国内でも「社内向けAPIポータルサイトのCMSをAWS App Runnerで作った」のようにAWSでStrapiを運用するケースが出てきているようです。

今はまだフロントエンドに強い技術者でないとStrapiを使いこなすのは難しいですが、AWSなどの大手クラウドがLightSailのような一般人向けのサービスでStrapiを簡単に開設出来るようになれば、私のように「WordPressを未だに使っているのは恥ずかしい」と思っている技術屋から順番に脱WordPressが始まると予想しています。